斜面を樹木で土留め

デザイン

斜面を土留めする方法

雑木の庭の裏面は斜面になっています。斜面はコンクリートで固める方法もありますが、夏に暑く冬には寒くなってしまいます。一方、斜面に植物を植えておけば夏は涼しく冬は暖かいので家は半地下状態になりとても理想的です。ですが、樹木などの植物で斜面を土留めすると、コンクリートの斜面よりは大雨が降った際に崩れやすく土砂崩れになったりする危険性があります。そのため、家の裏斜面の樹木は土留めの役割も担わせるよう考えて植樹をしています。

樹木の根について知る

樹木が倒れるニュースが流れた時にどんな樹木が倒れているかよく見てみると、どんな樹木が倒れやすいのかがわかります。ソヨゴ等の根の浅い木は台風の後にはよく倒れているので、抵抗に弱いのがよくわかります。樹木の根は普段は地中にあって見えないものですが、根とは樹木を考えるうえでとても大切なのだと痛感します。植木を移動しようと移植をする際にも樹木によって根の張り方が異なるのはよくわかります。どのあたりに太い根がありそうかなど考えることができるので移植作業もやりやすくなります。いろいろな意味で根の張り方は知っておいたほうが良いでしょう。

また、樹木を伐採して根が残った場合にもその根は土を保持し続けてくれますが、その効果は多くても5-7年ほどで薄れていますので、新しい植物で世代交代をしてやることが必要になります。

斜面を土留めする樹木に必要なこと

斜面の樹木に必要なことはなかなか厳しいです。大きくは3つあります。

  1. 成長が遅いこと
    斜面はアクセスが難しいのであまり手入れができないため成長が遅い樹木が望ましい
  2. 最終的な樹高が大きくないこと
    斜面に生える樹木は根元の位置が高いため、手入れ時に届きにくいので樹高は低いほうが良い
  3. 土壌を保持・緊縛してくれる根であること
    斜面の土をしっかり保持・緊縛してくれる根である必要があります

  この3条件をすべて満たす樹木はそう多くないです。特に「3.土壌を保持・緊縛してくれる根であること」は普段目にすることがないので知るのは容易ではありません。

最新樹木根系図説はかなりマニアックですが、普段土の中に埋まっていて見ることのできない樹木の根を詳しく解説しててとても興味深い良本です。写真や絵で解説してくれているので、分厚い本ですが楽しく読むことができました。

土壌緊縛力、土壌保持力などが、根の深さ、細根の割合、根の張り方でどう異なるか樹木の種類ごとに写真やイラストで解説してくれています。土壌保持力と土壌緊縛力は違いがわかりにくいですが、土壌保持力は表面の土が流れ出すのを防ぐ意味合いがあり、土壌緊縛力は土の奥底まで根を張って土にしっかり固定されるかといった違いがあるようです。どちらも斜面の土留めには必要な項目です。

根の張り方で感じたこと

樹木の移植をしたり、根の本を読んだりしたりして思うのは、根の張り方と樹木の形はよく似ているということです。つまり、高くなる樹木は深く根をはることが多く、横に広がる樹木は横に根を広げることが多いということです。しかし、手入れが難しいので高木になる樹木を斜面に植えるわけにはいきません。もちろんソヨゴのように高木になるのに根が浅いというように、例外の樹木もたくさんあります。また、枝の広がり方も同様のことが言えるので、「樹高や枝の広がり方のわりに根を深く広くはりやすい」といった樹木もありますので、斜面に土留めにはそういった樹木を選ぶのがよいと思います。

雑木の庭の斜面に選んだ樹木

アジサイ等のガマズミ類は「樹高や枝の広がり方のわりに根を深く広くはりやすい」という項目にわりと該当しているようです。家の裏は日陰になりやすい場所でもありますから、日陰に強いアジサイは、いくつか植えるようにしています。

また、少し樹木が大きくなってもいい場所や陽当たりの良い場所にはスモモやカキの木を植えており、これらの樹木も根を強く張ってくれます。ただし剪定は必須です。すこし管理は必要ですが、実や花が楽しめるのが魅力です。

ほかにもサワフタギなど斜面に相応しい樹木がいくつかあることがわかりました。しかし、もっとも大事なのは一種類だけ植えないことかなと思います。さきほども書いたように、「根には土壌の表面の流出を防ぐ根や、土を深くまでしっかりと保持する根」など、様々な土の保持する根の形があります。一種類の樹木ではこれらをすべてカバーすることが難しくてもいくつかの樹木や草類などの植物を組み合わせて植えれば、相互に良いところを補ってくれるはずです。根のことをよく調べて心地よく自然災害に強い斜面を作りたいと思っています。